【名前】長島直紀
【経歴】兵庫県立長田高校サッカー部→一橋大学ア式蹴球部
【部内での役割】事業本部長 兼 幹部会議長
【その他の活動】東京都大学サッカー連盟 学生幹事
ぴあスポーツビジネスプログラム第1期
スタッフになる決断
ーなぜ、大学サッカーではスタッフとして関わろうと考えましたか?
僕は幼稚園の頃から、ずっと情熱を持ってサッカーに打ち込んできました。
そんなサッカー人生の中で、スタッフとしてサッカーに関わろうと考えたきっかけは、高校生の夏です。
夏の総体の負けた試合で、肩の靭帯を怪我してしまって、医者には手術すると5ヶ月かかると言われたんですよね。
そうなると、選手権にすら間に合わずに引退になってしまう訳です。
キャプテンだったこともありましたし、受験も控えていた年でもありました。
そんな僕を見かねてか、監督と色々お話しする中で、選手兼コーチという立場で残りのシーズンを戦う提案を頂きました。
この経験が今の自分に大きく影響を与えてくれています。
ー具体的にどのような経験をしましたか?
僕のサッカーの認識は、戦略と組織の競技です。
戦略だけが先走って勝つことはできないですし、裏には必ず優れた組織が必要です。
組織とは、1人の関係性から始まるもので、日々のコミュニケーションがいかに大切かを選手時代からすごく実感してきました。
僕自身は、1人のプレーヤーとしてサッカーと向き合うより、この立場になった時の方が、すごくサッカーの本質に触れているような実感をすることが出来ました。
もちろん、怪我に関しては手術して復帰することもできました。
ただ、この感覚を味わってしまったので、自分のパーソナリティや将来的なビジョンから考えて、”自分は選手じゃない”と大学入る前には悟りましたね。
大学サッカーについて
ー入部してから感じたギャップはありましたか?
ありましたね。笑
それこそ、社会科学、経営学の最高峰だと言われている大学の体育会の組織が、戦略性も組織の視座のレベルも、自分が考えていた半分程度だったという印象でした。
正直、入部当初はショックが大きかったですが、逆に色々と挑戦できたことは今になって大きかったなと実感してます。
大学サッカーはまだまだ未熟だからこそ、世間が思っているより余白と伸び代があり、可能性が無限大で、僕自身は事業と組織のマネジメントにフルコミットすることが出来ています。
初めはガッカリしましたが、そのギャップの中で自分にできることを考えたからこそ、行動して今の立ち位置を掴むことができたと思っています。
ー一橋ア式蹴球部に関わって、一番変化にコミットできたと感じる部分はどこですか?
まず一つは、ミッションドリブンになったことです。
僕がずっと抱えてきた問題として、体育会の組織は、世間で言われる組織論とは前提が大きく異なります。
それは、3年4年で人材が入れ替わることです。
組織のリーダーも当然入れ替わります。
大人スタッフはいますが、組織の運営はほぼ学生が中心です。
なので、そこが組織の脆さに繋がってしまっていると感じています。
だからこそ、永続的に組織として成長するために、下の世代にしっかりナレッジをパスする仕組み、構造から変化を加えました。
具体的には、組織は3年生が中心で意思決定を行っています。
4年生は昨年経験しているので、アドバイザー的な立ち位置で、一年経験した人材が組織に残っている状態を作りました。
また、卒業後のキャリア選択の際にも、3年生の間に組織のリーダーを経験することで、自分の幸せの価値観や強みがわかった状態で就活に向かうことが出来ています。
この構造に変えてみて、いい方向に進んでいると実感しています。
ー大学サッカーの魅力を教えてください。
全ての大学に言えることか分かりませんが、大学サッカーでは難しいことにチャレンジすることが出来ます。
学生という未熟な人たちが、何かに本気で打ち込んで社会にインパクトを与えに行くことは、とてもやりがいを感じますし、すごく面白いです。
社会に出てからの方が簡単なのかもしれないですが、難しいからこそ、そのプロセスでしか味わえない特別な感情があります。
だからこそ、辞められないですし、夢中になるんだろうなと感じています。
一橋ア式蹴球部について
ー今年の一年でどんなチームにしたいですか?
実はシーズンの目標はまだ立てていません。
我々は、目標の種類を状態目標と成果目標の二つで捉えています。
昨年度は一部昇格を目標にし、監督と選手でその基準を求めてやってきました。
ただ、シーズンが進むにつれて、チーム全体が身の丈に合っていない感覚に陥ってしまったんですよね。
そこから、監督の戸田和幸さん(現SIBUYA CITY FC テクニカルダイレクター兼コーチ)が、”昇格”をNGワードにしたんですよね。
結果的には、面白いことにそこからチームは勝ち始めました。
勝利に標準を合わせるのではなく、弱さから逃げずに自分たちのあるべき姿に標準を合わせることで、結果につながった経験をしました。
僕たちは、逞しく自分を変える勇気を持って、相手に立ち向かっていくことがあるべき姿だと再認識することができました。
なので、そこに標準を合わせて、成果目標を設定できればと思っています。
ーでは、一橋ア式蹴球部の中長期的なビジョンを聞かせてください。
我々が考える、サッカーをする究極的な理由は、情緒的、経済的、社会的な価値を創ることです。
ただ勝つのではなく、先ほど話した姿勢で取り組むことによって、誰かに力を届けること、地域の人たちや企業との繋がりを創ることに価値があると考えています。
競技力だけが、この業界の軸になってしまうと、我々は勝つことが難しいんですよね。
なので競争戦略として、競技力とは別の柱を育て、一橋ア式蹴球部としてのブランドを創ることが必要だと考えています。
大学としても、”キャプテンズ・オブ・インダストリー”ということを掲げていて、つまりは、国際的に通用する産業界のリーダーたり得る人材の育成をするということです。
これは、部としてもミッションに掲げていて、産業の観点から大学スポーツを引っ張る存在で居なくてはいけないと考えています。
部としても、サッカー推薦がないので、このブランディングがリクルーティングと密接に関わっています。
なので、大学として目指す方向性を理解しながら、ア式蹴球部を名指ししてもらえるようにチャレンジしていきたいです。
今後のキャリアについて
ー卒業後のキャリアについて聞かせてください。
そうですね。二つあります。
一つ目として僕はやっぱり、スポーツエンターテイメントのビジネスがしたいと考えています。
ビジネスモデルをしっかり構築して、強化に投資をする循環を創ることができれば、クラブとして大きくなることができると思っています。
そして最後に、ピッチ上の試合結果で占われるというロマンとゲーム性を味わいたいです。
ここは、自分が人生で一度はチャレンジしたいところです。
そして、二つ目に自分がおじいちゃんになって、どんな生活をしていたいかを考えたときに、若者が成長をする姿を見れる状態でありたいと考えています。
自分自身もエネルギーをもらいながら、関わる人が希望を持って、育つ場所を作っていきたいですね。
この二つをどう実現させて行くのか、どう繋げていけるのかはまだ分かりませんが、これから戦略的にいきたいです。
ー最後に体育会学生に伝えたいことはありますか?
大学スポーツは、組織が主語になることが多く、「体育会」という看板の大きさ・強制力によって、個人を組織に従属させるような価値観の組織もまだまだ多いと感じています。
しかし、組織への帰属意識や愛着というものは、自らの成長や躍動、心地の良い人間関係があって初めて、成立するものだと考えています。
だからこそ、本当の意味で組織を信頼し、組織への正しい貢献を生むには、自分自身が「どんなことに幸せを感じるか」「この環境でどんな成長と成功を手にできるのか」を個々人に考えさせる必要があります。
安易に圧力を持って組織を束ねるのではなく、個々人の動機を適切に引き出し、組織のベクトルを生み出していくことで、組織全体のアウトプットは増していきます。
体育会学生の皆さんに伝えたいことは、組織への貢献は「自分を知る」ところから始まるということです。
まだまだ、なんとなく組織に所属してしまっている学生も多いので、僕自身も後輩にはもっと問いていきたいです。
ー本日はありがとうございました。